春になれば、出て来るあの人から



四十代も後半、
国際結婚に疲れていた。
いや、
人生に疲れていた。
人生の敗北組だった。

日本へ帰ってきたって、
私を待っていたのは、年老いた我が両親だけ。
お金もないけど、
この両親からの愛が、
私を救ってくれたのがせめてもの救い。

私は慎ましく生きていこうと誓った。←何に?
仕事を見つけ、
細々と一人で生きて行く覚悟を固めていた。
そして、心は氷のように冷たくて、
真っ暗だった。

冷たい2月の朝。
成田空港は、まるで冷蔵庫の中みたいな冷たさだったけれど、
でも日本に着いた時、
心はなんだかほっこりとしたのを覚えている。

さて、
そんな人生が終わってしまった私に、
なぜ、もう一度婚活をしよう!
結婚をしたいと思い起こさせてくれたのか?
それは、ある晴れた小春日和に、
その事件がありました。
三月の初めぐらいだったと思う。

私は、家の近くの図書館へ足早に向かっていた日のこと。
背後から、聞こえる声。

「すみません、すみません」

どうやら、私を呼び止めているみたい。
振り向く私。

「あ、あの、あのですね」

見かけは30代ぐらいの男性だった。
なんだろう?
私、お財布でも落としたのかな。
男は、言葉を続ける。

「す、すみませんが、あの……」

私は気のない返事をした。
「なんですか?」

男は、息を荒げて言う。
「あの、お茶でも一緒に飲みませんか?」

え?

もしや、
これは、
この古いセリフは、
私は、
私は、

ワタシハ、イマ、

ナンパされたの?

急に、怖くなった。
体がわなわなと震える。
何か言わなきゃ。
でも、変に断って怒らせるのも怖い。
瞬時に、でまかせを言いはなす。

「今、これから仕事へ行くんで、すみません……」

どう考えても仕事しているようなカッコじゃないんだけれど、
急に小走りになって、男の元から離れようとするものの、
この男も、小走りになって私を追いかけてくる。
い、いやだ!
来ないで!
男は何か言っている。

「あの、あのせめてコレを…」

男は、何か白いものを私に手渡そうとするので、
怖くて、私はそれを受け取ると、
ただの、紙切れだった。

紙切れ?
まるで、レシートのような紙切れ。

思わず、私は立ち止まってしまった。
そして、男に尋ねた。

「これ、何ですか?」

紙切れを、男に差し出すと、

「そこに僕の電話番号を書きますから」

いやいや、
それは、ないから。
あなたに会いたいと、思わないから。


春には、こういうのが出てくるというけれど、
このひとは変態なんだと思うんだけど、

私は、その変態から離れて、
恐ろしさを払いのけて、
冷静になったところで、
こう思った。

もしや、
40代後半でも、
婚活出来るんじゃなかろうか?


こうして、
春の変態さんから勇気づけられた私は、
もういっちょ、ひと花咲かせる思いで、
婚活することを誓ったのであります。

サンキュー変態。(というのは、半分冗談)

でも、

きっと、人生で最後のナンパだったんだろうね私。

変態じゃなくて、
本当に好きな相手と恋愛して結ばれたい。
そう、思った2016年の春なのでした。


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by Blackcatbaggy | 2016-09-11 21:42 | 婚活の日々

婚活日記とか、日々のこと色々。


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